いじわる主治医は、私にだけ甘い
家に帰っても落ち着いて彩人の顔が見られなくて、悲しむのが分かってるのに無視してしまう。

「冴、今日は発作も出たしゆっくり休んで。また体調が良い時に話そう」

「……」

今日は彩人と寝たくなくてリビングのソファで寝ようとすると、彩人がまたお姫様抱っこをして、ベッドへ運ばれそうになる。

「やだ! 離して」

彩人はすぐに私を下ろした。

「分かった。でもソファで寝るのはだめだ。冴がベッドで寝て。俺がここで寝るから」

「なんで……放っておいてよ」

「放ってなんておけるかよ! 赤ちゃんがいるとかいないとか関係なく、俺は冴が好きなんだよ。大切なんだよ」

そんなこと言われたら、もっと悲しくて愛しくなる。

「早く体調が良くなりますように」

ちゅ、とおやすみのキスをする彩人。
考えなくちゃ、ちゃんと。
私と彩人の未来のこと。

「新婚旅行行きたかった」

「……そうだな」

「ウェディングフォトだってまだ撮ってない」

「……そうだな」

「映画館だって、海だって、彩人ともっとふたりで、彩人を独り占めしたかったよ!!」

「俺も……でも同じくらい、もしここに俺たちの赤ちゃんが居てくれるなら愛しくて守りたくて仕方ないんだ」

「私だって……私だってそうだよ」

「それが聞けてよかった。ねぇ、本音は全部話せよ。受け止めるから。とにかく今日は休んで」

おやすみ、と言って、彩人は寝室を出ていった。
本当に本当は寂しい、そばに居てとは言えなかった。
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