さよなら、未来を生きる君へ
……ついにお別れの時がきた。
自分の手を見てみると透けている。
すぐ近くのソファが見えるくらい、足も体も徐々に透明になっていく。
異変が生じ始めたのは、1週間前。
それまで体が透明になることは1回もなかったのに、あいつが紗凪に告白した時、俺の姿はうっすら消えかかっていた。
その日から、俺の体が透明になったり元に戻ったりして、まるで紗凪の揺れる心情を表すかのように。
だから、なんとなく思った。
俺の役目は終わりを迎えているってことに。
紗凪に大切な人ができた。
男性恐怖症なのに、それでも大丈夫だと思えた人。
俺がいなくなっても紗凪は上手くやっていけると直感的に思った。
だけど、出会ったのがマッチングアプリだから薪原がどんな人なのか決定的に調べる必要があった。
紗凪を任せて大丈夫な人なのか、と。
だから、この1週間、紗凪から距離を取り薪原を尾行した。
最初は自称アニオタと偽って若い女性に近づこうとしているんじゃないかと疑いの目で見ていたが、日に日に薪原のこと知るたびにいい奴だと思った。
とても穏やかな性格で塾に通う生徒たちから親しまれ、他の先生からも信頼が厚い。
1人暮らしをしていて、時間さえあればアニメを見たり、料理も趣味らしく毎日3食自分でご飯を作っては規則正しい生活を送っている薪原。
紗凪にとって料理できる男は頼りになると思うし、好きなアニメについてたくさん語り合える人がいるととても楽しいだろう。
一緒に暮らしてみないと分からないところはあるが、紗凪のことを大切にしてくれるだろう。