経済学部一の人気者が同じ学部の大人しい女の子に一目惚れした理由│Quiet Strength×Soft Strength

今、振り返ってみると

 自分の言葉を打ち返す司と、綾音に言葉を渡す司を見てきた。両方とも三人でいるようになって見えてきた特別な司。けれどその上で、自分と綾音に対する彼の決定的な違いは。

 ぽ…っ。と、小さな灯が点ったような気付きを得た。驚くほどあっさりと、その違いを言語化する。自分に向き合う司は、きっと他の人間の延長線上にいる。けれど綾音の前にいる司だけは根本的に違う。

 ずっとそうだった。司は綾音に甘えている。それは支えのようなものではなくて、優しさや甘やかしのようなものでもないから分かり辛い。けれど司から綾音に向かう感情はいつもそういうものだった。

 思えば司はいつも誰かに重さを与えられるような場所にいた。頼られることも主張されることもそう。甘やかされることさえもそう。押すか引っ張られるかの違いなだけで、いつも何かの重さを与えられていた。自分もそうやって押そうとした。それを他とは違って司が押し返してきたからびっくりしたけれど、自分がしたのはそういうことだ。

 でも綾音は違う。そっと側にいて何もしない。無関心な他人ではなくて、それが綾音の距離感なのだ。綾音は誰かを動かそうとしない。けれど寄り添ってくれる心の近さをくれる。自分に重さを与えない綾音に司は安心したんだろうか。
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