この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!

これは王命結婚

「私たち、これで離婚できるわ」 

 はっきり告げると、彼の端正な顔立ちが一瞬にして、こわばった。

 普段は落ち着いている神秘的な紫の瞳が、驚きに染まって揺れる。
 いつもは冷静な彼も、動揺を隠しきれないみたい。

 その様子がちょっと意外に思えた。

「だからイザーク、あなたはもう自由よ」

 これからは好きに生きて欲しい。なんの遠慮もいらない。

 私と出会う前に戻る。

 ただ、それだけ。

 満面の笑みで告げたが、イザークはすごく渋い顔をしている。もっと喜んでくれると思っていた。予想と違った反応に、不安になって顔をのぞき込む。

「どうしたの?」

 グッと唇を噛みしめるイザークは一瞬、泣き出すんじゃないかとさえ思った。

「あんたは――俺の妻じゃないのか?」

 真剣な声で問われ、一瞬、キョトンとした。だがすぐに笑いが込み上げた。

「ええ、今はまだ、書類上ではね」

 嫌味ではなく、本心だ。

 私だって最初、王命として嫁いできたから、ある程度覚悟していた。本当に、相手が望んでくれたのなら、努力して彼と一生添い遂げようと思っていた。

 縁あって夫婦になったのだから。

 だが、実際は初夜で拒絶され、彼の口から形式だけの結婚だと告げられた。

 その瞬間、私の中で早々に役目を果たそうと、考えをシフトチェンジした。

 よーし、じゃあ、離婚に向けて頑張るぞ! って。

 大義を果たしてからの離婚なら、可能だと思えたから。

 でも、今さらどうしたのだろう? あなたが望んだことじゃないの。

 不思議に思って首を傾げると、両肩をガッシとつかまれた。

 力の強さに顔をしかめると、イザークは伏せていた顔を勢いよく上げた。

「――待ってくれ」

 イザークはグッと唇を噛みしめ、一気に吐き出した。

「お願いだ。そんなこと、冗談でも言わないでくれ」
「えっ……」

 冗談ではないのだけど……。

 予想もしない展開に、今度は私が目を白黒させる番だ。

 唇を噛みしめ、今にも泣きだしそうな彼を前にして、私は呆気に取られた。

 えっ、でも、あなた、この結婚には、なにも期待していないと言い張ったわよね?

 そして、仲良くなる必要なんてないと――。

 なのになぜ、今さらそんなことを言い出すの?

 イザークは一度だけギュッと目を閉じ、深く息を吐き出す。

 すがるような眼差しを向けられ、混乱に陥った。
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