この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!
 耳を傾けるイザークに言葉を続けた。

「結晶を一つ、ここに持ってきてくださいませんか?」
「わかった」

 イザークはすぐさまうなずいた。

「それより、寒くないのか?」

 イザークは椅子にかけていたガウンを私の肩にそっとかける。暖炉の火が小さくないかと確認し、かいがいしく世話を焼く。

「まあ、大丈夫ですから」

 クスクスと笑ってしまう。

「だが、一つ聞きたいんだ」

 急にイザークが真剣な顔つきになる。

「魔力を使うと体に負担をかけてしまわないのだろうか? 例えば、魔力を使った対価で、寿命が縮まるなど――」
「それはありません」

 ゆっくりと首を横に振った。

「自分の限界はわかります。今回はそう容易くはない件でしたので、一か八かでしたが。一度で終わってよかったです」

 なぜかイザークは眉間に皺を寄せた。

「では、ネザークロウの洞窟に向かったのは、最初からそれが目的だったのか?」

 探るような眼差しを向けるイザークに、視線をそらす。

「……勘弁してくれ」

 顔を伏せ、深いため息をつくイザークに慌てる。

「でも、結果的に良かったじゃないですか」

 イザークは弾かれたように顔を上げた。

「だが、無茶はしないでくれ。魔力が強かろうと、力で向かってくる魔物には、太刀打ちできない場合もあるだろう。くれぐれも危ない場所には近づこうなどと思わないでくれ」

 目を合わせて力説され、静かにうなずいた。

「でも……ありがとうございました。私の無理なお願いに付き合ってくれて」
「ああ、まったくだな」
「えっ?」

 あっさり認める発言をしたものだから、思わず噴き出しそうになる。

 そこは、そんなことはない、って言うところでしょう!

 二人で顔を見合わせて笑い、温かい空気になる。

「イザーク……」

 名を呼ぶと、彼は喉をごくりと鳴らした。

「もう少し、落ち着いたら話があるの」

 イザークは静かにうなずいた。

「……ああ。俺も伝えたいことがあるんだ」

 イザークはフイッと視線を逸らすと、どこか躊躇した素振りを見せる。だが、唇を噛みしめグッと顔を上げると、そっと手を伸ばし、私の頬に触れる。

「本当に、もう大丈夫なのか?」
「――ええ」

 心配しているらしく、その気遣いに胸が温かくなる。

「一応、セレナの診察を受けてくれ。彼女には疲労から寝込んでいると伝えている」

 大げさだと思ったが、それでイザークが安心するなら、診察を受けよう。
 まさか魔力の使いすぎで倒れましたなんて、言えやしない。イザークの心遣いに感謝する。

 ***

「こんにちはー! シャルロット様!」

 午後になり、陽気なテンションでセレナがやってきた。

「すっかり顔色が良くなりましたね! 寝込んでいた時もイザーク様に言われて、様子をうかがいにきましたが、その時よりもグッと明るくなりました」

 セレナは聴診器を取り出し、一通りの診察をする。

「本当、イザーク様がすごく心配していましたよ」

 セレナは思い出したのか、クスリと笑いながらもテキパキと診察を進める。

「脈も正常ですし、特に問題ございませんわ」
「ありがとう」
「ふふっ。あのイザーク様を振り回すとは、なかなかやりますね」

 なにが面白いのかセレナは、始終楽しそうだった。
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