この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!
 ――ここは……。

 目を開けると、見慣れた天井が視界に入る。ゆっくりと首を傾けると、自室で間違いなかった。

 静かに身を起こすと、頭がズキズキと痛む。

 窓からは日差しが入り込んでいるが、今は何時頃だろう。
 しばらくボーっとしていたが、徐々に頭が鮮明になってきた。

 私――やったのだわ。

 自分が成し遂げたことを思い出し、達成感で胸がいっぱいになった。
 その時、静かに扉がノックされ、ドリーが入室してくる。

「シャルロット様……!!」

 私を視界に入れると、すぐさま駆け寄ってくる。

「大丈夫ですか? どこか痛いとか辛いとか、ないですか?」
「ええ、大丈夫よ」

 まったく、ドリーは大げさだと、苦笑していた。

「だって、三日も目を覚まさないのですから!!」
「えっ、三日も!?」

 信じられないことに、それだけ寝ていたらしい。

「よほど、力を使ったのでしょう。無理はなさらないでくださいね」

 私がここまで寝込んだのは初めてなので、自分でもビックリした。

 ふと、甘い匂いに気づき、鼻をスンと鳴らす。

「あら……」

 ベッド脇には大量の花が飾られていたのだ。

「イザーク様のお見舞いの品ですわ。心配して、一日何度も顔を見にくるわ、医者を呼びつけるわで、大変でした」

 そんなに心配かけてしまったのね。彼と会わなければと思っていると、扉がトントンとノックされた。

「噂をすれば、いらっしゃったようですね」

 私が返事をすると、扉が開く。
 姿を現したのはイザークだった。私の顔を見て目を丸くする。次に、顔がくしゃりとゆがんだと思うと、近づいてきた。

「もう大丈夫なのか? どこか辛くはないのか?」
「はい、大丈夫です。心配かけましたわ」

 質問攻めにする彼は、それほど心配したということだろう。

「あら、それは――」

 イザークが手にしていたのは薔薇の花束だった。

「寝ている間、良い香りがした方が心地よいだろうと思って、持ってきたんだ」

 北部ではこの季節、花を手に入れるのも、容易ではないだろうに。

「ありがとうございます」

 ズイッと差し出された花束を受け取る。それにしても――。

「花屋さんが開けそうですね」

 ベッド脇は花だらけになっているので、思わず笑ってしまう。イザークは恥ずかしそうに頬をかいた。
 ドリーに花を飾って欲しいと依頼すると、部屋から退室した。

「もう、起き上がって大丈夫なのか?」
「はい。少しだけ、頭が痛みますが――」

 イザークはベッド脇の椅子に静かに腰を下ろす。

「あの後、すぐにネザークロウの洞窟にいった。あんたが言った通りだった。驚くことに、中から魔物はおろか、瘴気すら消え去っていた。――なにをやったんだ?」
「私の魔力で淀んでいた空気、そしてそこに集まる瘴気を一掃したのです。瘴気がなくなり、魔物も住処を失ったでしょう」

 イザークは大きくかぶりを振る。

「にわかに話を聞いただけなら、信じられなかっただろうが、実際この目で見た。すごい力だ」

 彼に認められた気がして嬉しい。

「このブレスレットですが――」

 私はイザークの前にスッと手首を差し出す。

「普段は私の魔力を抑えているので、洞窟では外す必要があったのです」

 力を抑え込み、ここぞという時には解放する。

「それで、結晶は採掘できそうですか?」
「ああ、たくさん採掘できる! 間違いなく、北部は豊かになるだろう」

 結晶は寒い地域で採掘される方が純度が高く、高値で取引をされると聞く。
 今までは魔物がいたせいで手が出せなかったが、これで採掘可能なはずだ。

「あの洞窟はカロン家が管理する。工夫を雇い、本格的に採掘を始めるつもりだ。ゆくゆくは北部だけじゃなく、国内にも行きわたるだろう」
「それは良かったです」

 目を輝かせるイザークに微笑む。

「お願いがあるのですが」
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