亡霊の忘れ花
どこかぼんやりと樹に対峙する涼介と降り注ぐ眩いばかりの光の粒に、霞子は動けないままでいた。
さっきからずっと心が叫び喚いている。
おかしい。こんなのおかしい、と。
ーー私の時は、こんなことなかったのに!
そういえば、と不意に思い出した。
霞子と御大樹様の初の対面の時、付き添ったのは父だった。
その時大樹は光らず、ただただ霞子を圧倒するだけだった。大樹に畏怖を覚えて父の上着の裾を握った霞子に、父は確かにつぶやいたのだ。
“選ばれなかったか”ーーと。
それはもしかして力を授けられなかったのかとその時は不安になったのだが。
結局ちゃんと視えるようになったから、今の今まで父の言葉はすっかり忘れていた。
どこかに感情を置いてきたような瞳で大樹と向き合う弟に、目眩がした。
悪夢を見ているような心地だった。ずっと優秀な長女として周りに応えてきたつもりだった。難ありの弟の代わりに頑張らないと、と自分が家を支えるつもりで全てを捧げてきた。
それなのに。
こんな光景を見せつけられたら流石に悟る。
霞子は“違った”。
選ばれたのは、内心馬鹿にしていた弟の方だったのだ。