亡霊の忘れ花
「お母さんがね、もうすぐご飯できるって言ってたよ。さっちゃんね、はるきくんを起こしにきたの」
「もうそんな時間かぁ。ありがと。手伝いに行かなくちゃ」
よっこらせ、と皐月を抱き上げ、立ち上がる。耳元で皐月がきゃーっとはしゃいだ。
下の階に降りて皐月をおろし、顔を洗う。
はるきくんねぐせついてるーと笑われたので、適当に跳ねている部分を水で濡らした。
キッチンに顔を出し、挨拶をする。
「おはよう薫さん」
もう大方おかずは作り終えたようだ。あとは皿に盛って配膳するくらいしか仕事がない。
やっぱりもっと早く起きるだなと反省して菜箸を手に取った陽希に、薫が笑った。
「おはよう陽希くん。別に手伝ってくれなくても良いのに。本当によくできた息子だこと」
「いやいや、これくらいはさせてよ」
ただでさえ、居候させてもらっている身なのだから。

気を遣わなくて良いのにーと頬を膨らませる薫さんを真似して、皐月が頬をパンパンに膨らませる。
そっくりな顔でそっくりな表情をする親子に笑みが溢れた。
「おっ楽しそうなことしてんなー」
リビングから顔を覗かせたのは、淳だ。皐月がおとーさん、と呼んで駆けより、その様子を薫がくすくすと見守る。陽希も笑みを作った。

楽園のようでありながら、気が遠くなる空間。辛くなるから、直視しないように見る。ぼんやりぼんやり、薄目で眺める。もうまともに顔が見れなくなって、どのくらいだろう。

この暖かい家庭で、俺だけがよそ者だ。
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