ワンナイト限りの割り切り関係に「もう一度」は無粋です! ~正反対な私たちは今日も意見が合いません~
 同じく足止めをくらっている人も、ぼちぼち解決策を見つけて動き出していた。私も何かしらの方法を見つけようとスマホを操作する。

 ビジホ、ネカフェ、24時間営業の飲食店…などなど。現代とは便利なもので、何とかなりそうな手段はゴロゴロ転がっている。あとは…、まあ、アプリで相手を探すというのも無い話ではない。

(どうせ駅は人が多いだろうし、会社で残った方が得策よね)

 仕事自体は終わったからか、気が抜けて仕方ない。欠伸をしながら避難所を探していれば、急に後ろから声がかかった。

「おや、氷川さん。定時を過ぎてもまだ残っているなんて珍しいですね」
「びっっっくりしたぁ…」
「すみません。そんなに驚く思っていませんでした」

 振り返れば、申し訳なさそうな表情の風間さんがいた。手に鞄を持っているところを見るに、もう退勤するところなのだろう。

「話は戻しますが、残業ですか? もしよろしければお手伝いしますよ」
「ありがとうございます。でも、残業じゃないのでご厚意だけ受け取らせていただきます」

 どうやら残っている事情に見当がつかないようで、首を傾げられる。言うかどうか悩んだが、嘘を吐いても何の意味もない。そう判断して、スマホの画面を見せる。

「最寄りまでの電車がついさっき人身事故で止まったんです。復旧の目途も立っていないみたいなので、今日の拠り所を探している所です」
「それは散々でしたね」

 彼は同情の色を見せつつも、その瞳の奥には隠しきれない歓喜の色を宿していた。そして、「待ってました」と言わんばかりに悪戯っぽく口角を上げる。

 「なら、僕が家までお送りしましょうか?」
 「えっ?」
 「偶然ですが、今日は朝一で社外の仕事が入っていたので車で来ているんです。ああ、遠慮はいりませんよ。ちょうど僕も帰るところでしたから」

 それはそれは良い笑顔で頷く風間さんに、顔を顰めてしまう。もしかして…いや、もしかしなくても、

「…人身事故のこと、私がお伝えする前に知っていましたね? その上で私に声をかけてきませんでした?」
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