Automatic Love
Episode.1
 このご時世「サービス」と言う名の商品はごまんとあるけれど。

 正直なところ、こればかりは体験しないと価値は実感できない。

 普段から仕事の業務でしか話さない彼女が口にしなかったら、私は恐らく永遠に「彼」とは出会ってはいなかっただろう。

 それくらい、「彼氏」なんて、私と御縁のない世界に思えたから―――。


             ✦


 「これ、お願いします」

 午前も11時半に差し掛かった頃、私に対して背後から声を掛けてくる女子社員の姿があった。
 配属されて1年が経つ「仕事が早くて出来る」と名の通った道部(みちべ)さんだ。
 下の名前は…確か、(さき)さんだったかな。

 新商品の会見用の資料データ。
 プレスリリース用の投げ込み書類の資料を渡された私は、少し間の抜けた声を漏らすと、その書類を受け取っていた。

 私は彼女より2年先輩だと言うのに、まるで同僚か後輩のような空気を垂れ流している。

 不意に、道部、と声がかかり、彼女は斜め真後ろを振り返る。

「道部、昼飯、後で立川(たちかわ)と俺と仙崎(せんざき)と行かね?」

どうやら食事のお誘いらしい。

 彼女はその口調に何の感情も乗せることなく、はい、と答えている。
 そんなやり取りを聞くでもなく耳に拾いながら、私、蒲田(かばた)陽茉莉(ひまり)こと陽茉莉はデスクでノートパソコンのキーボードを叩いていた。
< 1 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop