Automatic Love
 今年で25歳になる私、陽茉莉が勤務するのは都内に(そび)える高層ビル群の一部。

 洗剤メーカーとしては国内で1位を独走する有名な大企業「LEMONADE(レモネード)」だ。
 日用品をカバーする部署もあるにはあるが、主に食器用洗剤と他社と提携する洗濯洗剤を開発している。
 洗浄力が強いのに手肌にも優しい安全で丁寧な商品は、国内のみならずアジアでは絶大な支持を受けているメーカーだ。

 その広報部で勤務して3年が経った私は、この日も本社内の1階にある食堂で親子丼を食べていた。

 傍には友人の姿はなかった。
 元来、コミュニケーションが下手で、交友関係の乏しい私は、入社以来、親しい社員は出来なかったのだ。

 食堂には違う部署の社員が、賑やかに食事を楽しむ姿が広がる。
 食堂のカウンターには食事を頼む社員が列をなしているのが見えた。

 そそくさと食べ終わり、私は椅子から立ち上がろうと、椅子を後ろに引いて腰を上げる。
 しかし。
 鈍く強めの衝撃を受けて、私は一度ふらついて驚いていた。
 途端に大きめの悲鳴がその場に響いて、私は肩をすくめた。
 どうやら私が後ろに引いた椅子と、バッグのテーブル席で同じく立とうとしたらしい女子社員の身体がぶつかってしまったらしい。
 彼女、近江(おうみ)さんが、盛大に顔をしかめている。

「ちょっ…」

 いつもどんな風にメイクしてるんだろうと、感心してしまう美人メイクの彼女は、綺麗な顔を歪めて、私を睨んでいる。
< 2 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop