Automatic Love
 そのあまりに精巧に出来た顔立ちと立ち居振る舞いから、じっと見つめていると彼は私を見やった。

「初めまして」

 会釈と共に、発した低く穏やかさの感じられるその声に、私は恐る恐る頭を下げた。

「…あ、どうも」

 遠藤さんが申し込んでくれた際の男性設定は確か―――30歳だったような。
 そう言われてみれば30歳に足を掛けた様な年頃にも見える。
 直後、彼は一度目を閉じると、私へと向き直ってからスッと又目を開いて私を正面から対峙した。
 その様子からは「メカニック」感は全くなかった。

―――凄い。遠藤さんの言ってた通りだ。

「自然…」

呟いていると、彼は私に歩み寄ってきた。

―――遠藤さんが設定した通り…。

私は彼の着ている身なりを見やる。

―――白いワイシャツ姿だし。

「…凄い、ホントに本物の人間みたい…」

 そのボヤいた言葉が、本人に聞こえていたと言う現実にまで、私は気が回っていなかった。
 背中にトンと何かがぶつかる感触があり、ようやく私はハッと現実に引き戻される。
 背中にリビング端の壁が着いたのに気づいた。え、と声が漏れる。
 我に返って、元いた場所から3メートル近く後退っていた自分に気づいた。
 目の前の「彼」は、背中が壁に着いた私の頭の上に左腕をトンと置き、“追い詰めて”いたようだ。

「“ホントに本当の人間みたい”?君が俺しか見れなくなるようにしてやる…俺をアンドロイドだと侮れないように」

 まるで氷山を削るような。
その漆喰のようにまっさらで鋭い言葉が私の心を深く削いでいく。
< 10 / 10 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop