Automatic Love
「あ!いえ、分かります」

どうもー、と笑顔と声を残し、彼は去って行った。

―――さて、どうしようか。

 運送スタッフが残した目の前の巨大な段ボール。
 しばしその外観を見つめていた私は、下唇を噛んで腕組みをしていた。
 数分「遠藤さん由来」の“それ”に戸惑い眺める。
 だが「いつまでも開けないのも仕方ない」と思い立つと、間もなくハサミでテープを切った。
 中身は、黒いビニールパックに耐衝撃としてプチプチが覆っており、包装はしっかりしていた。
 プチプチ包装を取っ払うと、保冷タンクのような金属系の保冷機が現れる。
 ロックを外してまるでロッカーの様な大きさの容器の扉を開けると「その人」は現れた。

思わず声が漏れる。

「うわ…」

 保冷容器にスッポリと収まって立っていた「彼」。
 私がその異質な状況に凍り付いたように固まって突っ立っていると、どうやら自動でスイッチが入ったらしい。
 彼は目をスッと開いた。
 ライトグレーがかった茶色いその双眸(そうぼう)に、私の間抜けな表情が映り込む。
 容器から自ら歩み出た「彼」は、綺麗にセンター分けの黒髪をワックスで流している。
 色白で綺麗な顔立ちは、まるでどこかの雑誌に映り込むファッションモデルのようだった。

―――分かった。じゃ、スーツ男子にしとくね。

 遠藤さんがあの時、屋上で尋ねた私の男性の好み。
 かつて最後に恋した高校時代の英語教諭が、ワイシャツが似合う先生だったこともあり参考にしたが。
 まさかこんな風に思い出を使うことになるとは。
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