苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
私が下の方へ指を伸ばすと、そこへ課長が身を屈ませ、顔を寄せる。見上げると、すぐ傍に立ち、その横顔が目に飛び込んできた。思わずぼんやりと見つめてしまい、目を逸らせなくなる。
すぐに視線を外さなきゃ。そう思っていても、瞳は動かせない。
その様子に気付いた課長は、私へ視線を向けた。その眼差しは柔らかく、そしてじんわりと包み込むような温もりを感じる。
どうしてこんな目をして私を見るのか。静止画のようになってしまったこの状況を、どうすればいいのかも分からず、手を伸ばす。そして、そのまま課長のスーツにしがみつき、寄り掛かった。
「芦原……?」
課長は驚くように呟いたけれど、受けとめるように私の肩を支えた。
アルコールのせいだろうか。こうして彼の胸に身を預けていることが、どこか現実に思えずにいた。きっとまだ、酔いがピークの最中で、夢の中にふわふわと漂う感覚になっているからだ。
緩んだ気持ちのまま、心の奥にしまっていた願望が声になって出てしまう。
「ちょっとだけ……このままでもいいですか?」
課長からの返答はない。でも彼の手は私の肩をそっと抱いたまま、動かないでいてくれた。私はさらに手を伸ばし、スーツの背中辺りに軽くしがみつく。