苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 ぎこちなく挨拶をされ、こちらも声が上ずる。

「あぁ、おはよう」

 普段通りの自分を取り戻すため、そのまま席へと向かう。
 席へ着くと今日の予定を確認し、コーヒーを飲んで気持ちを切り替えた。

 午前の会議を終え、チームミーティングの合間に席を立つ。廊下を出たところで芦原の後ろ姿を見かけた。思わず立ち止まり、彼女の背中をしばらく視線で追いかける。

「そこにいたんですか、課長!」

 背後から呼びかけられ、慌てて振り向く。Cチームの若松が驚いたような顔をして立っていた。

「どうしたんですか? こんな所でぼうっとして」
「いや。何でもない」

 その一言で、頭の中に浮かぶおかしな感情を消し去る。
 何しているんだ。今は仕事中だというのに……。
 呼吸を整えると、冷静さを保つために片手でメガネの位置を調整し直す。

「で、どうした?」
「パッケージデザインの修正案が上がってきたのでチェックしました。急いで確認が欲しいそうです」
「分かった。すぐに確認する」

 慌ただしく一日が過ぎていく。
 それから一週間、Cチームの仕事の際は、なるべく芦原に視線を合わせないよう心掛けた。彼女もそれを感じてか、特にこちらへ親しく接することもなく淡々と仕事をこなしている。


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