苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 予定通り集合時間に間に合いそう。
 エレベーターに乗り込むと、すぐに誰かが乗り込んできた。

「あ……」

 お互いに声が被る。その相手は課長だった。幸い周囲には誰もおらず、私は扉を閉めるためにボタンを押した。エレベーターは静かに降りていく。隣で立っているのに、二人とも黙ったままだ。私は正面を見たまま、言葉を発した。

「飲み会の間、私の方ばかり見ちゃダメですよ。特に志田さんは女性なので、違和感があれば、すぐに気付かれますからね」

「そんなことは分かってる。仕事中は、いつも見てないだろ」

 確かにそうだった。でも、狭い状況で、しかもアルコールが入る。どんなことが起きるのかは分からない。思考を巡らせていると、急に片手が何かに触れた。手元を見ると、課長が手を伸ばし、指先を絡めてる。

 いくら業務時間外だからって、こんな場所で。抗議するために顔を見上げると、ふざけた顔をして笑ってる。どうやら私は、からかわれているようだ。

「もう。いい加減に……」

 そう言ってる間に一階に到着し、ドアが開く。課長がさっと手を離すと、先に歩き出した。すぐにこちらを振り返ると、口元に笑みを浮かべている。

「課長!」

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