苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
何だか夢でも見ているようで、ぼんやりしてしまう。ずっと上手くいかなかった恋愛が、こんなにスムーズに進んでしまっていいのだろうか。
「本当に……私でもいいんですか?」
思わず抱いた不安が、呟きとして漏れてしまう。すると彼が体を離し、体を屈めて私に視線を合わせた。熱い眼差しがこちらを見据える。
「何度でも伝えるよ。俺にとって、何よりも明奈が必要なんだ」
その言葉に酔いそうになり、恥ずかしさで視線を彷徨わせた。今夜はいつまでもふわふわとした雲の上を歩いているかのようだ。
「それに、あの美味いカレーも食べたいからな」
「えぇっ……。カレーが目的ですか?」
嬉しいけれど、ちょっと残念なような。隣を見上げると、陽貴さんはいたずらっ子みたいに、お日様のような笑顔で笑った。
「違うよ。明奈がいい理由がたくさんありすぎて、困ってる。詳しいプレゼンは、これからたくさん用意させて。だから、今夜は俺のことだけを考えてくれないか?」
陽貴さんは足を止めると、私に顔を近付け、唇をそっと重ねた。
そして再び寒空の下、二人で歩き出す。
目の前には夜の街灯りが広がり、どこか輝いて見えた。それは、私たちが目指す明るい未来を、そっと優しく照らしている。
(END)
