苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
何のことか分からず、尋ねた。彼は私の手を握ったまま、体を屈ませるようにして顔を近付ける。
「明奈のお父さんに、だよ」
「えっ!? あ、あの……でも」
「俺が会いたいんだ。きちんと挨拶して、将来のことを考えていると伝えたい」
「しょ、将来……!?」
いきなり伝えられた言葉で、頭が混乱する。確かに、二人でずっといたいことに変わりはないけど、急にプロポーズのようなことを……。
すると彼が立ち止まり、手を繋いだまま真正面に立った。
「急なプレゼンで申し訳ない。俺はずっと明奈といたい。だから、これからも隣で一緒に歩いてくれないか?」
私はゆっくりと顔を上げる。彼は真剣な眼差しで、誠実な言葉を伝えてくれた。
「もちろん。私も……陽貴さんとずっと一緒にいたいです」
そう答えた瞬間、繋いでいた手を引っ張られ、彼の腕の中へと引き込まれる。
「ひゃっ」
いつの間にか抱きしめられている。薄暗いとはいえ、こんな場所で抱きしめられるとは思わず、全身が熱くなり、沸騰しそうになった。
「陽貴さん!? こんな公共の場所で……」
「いいよ。今夜は誰に見られても構わない」
あんなに冷静だった人が、今夜は別人のように、気持ちが昂っている様子が伝わってくる。しばらく抱きしめられ、落ち着くまでに時間がかかった。