苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
そう……だよね。
彼は最初からそういう人だ……。
「先日はありがとうございました~」なんて、気軽に話せる相手ではない。
月曜日からしっかりと完全装備している課長相手に、わざわざ悩む必要などなかった。
もう二十七歳も終盤だというのに、いつまでも成長してないような気がする。
私が今勤めているのは、『HINOコフレ』という老舗の洋菓子メーカーだ。
ここへ入社したのは、半年ほど前のこと。大学を卒業後、中小の食品会社に就職し、営業部に所属していた。けれども、いつしかその会社にやり辛さを感じ、新しい分野へ挑戦したくなった。
ある日、【新規ブランドを作り上げるチームの一員を募集】との文言が目に入る。それが、『HINOコフレ』に転職を決意するきっかけだった。
そして、昔から好きだった、あの洋菓子メーカーに入りたいと決意する。
実は、ここのクッキーには、昔から思い入れがあった。まるで宝石のような、アイシングを施したコフレのジュエルクッキーはデパ地下の定番で、時々父の元へ届く待ち遠しいお菓子の一つだったからだ。
転職サイトで商品企画の募集を目にした時、まるで導かれた運命のように感じた。
すぐに行動に移し、奇跡が起きてしまう。