苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

「おはようございます……」
「あぁ、おはよう」

 控えめに挨拶をすると、課長は特に驚くこともなく機械的に答えてくれた。

 不審に思われた?
 今ので問題ないよね?
 何も慌てる必要もないのに……。

 彼は180センチ以上ある高身長で、細身のガッチリ体型。綺麗にセットされたミディアムショートのヘアスタイルと、ダークネイビーのスーツを身に纏う姿は、まるで鎧を身に付けた人型ロボットのように見える。
 152センチの私には、隣に立つだけで脅威に感じるほどだ。

 課長は普段から少し目つきが鋭く、スクエアタイプのシルバーフレームメガネと相まって、女子社員の間ではアンドロイド部長と呼ばれている。外見は人間のように見えて、中身はAIということらしい。

 先ほどの鋭い視線がこちらを睨んでいたように感じ、思わず息苦しくなった。
 数日前、とある事情で言葉を交わしたはずなのに、すっかり遠い関係に戻ってしまっている。静まり返ったエレベーターの中、再び、週末の出来事を話題にした方がいいか悩み始めた。

 でも、どうやって声をかけたら……?

 すぐに目的の階に到着し、私と部長、そして同じ会社である数人の社員がその階で降りた。
 呼吸を整え身構えているうちに、彼は足早に去り、先に企画開発本部のある部屋へと向かっていく。

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