苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~
ドッグカフェのオーナーも長い髪で年上に見える。そして、彼女は課長のことを名前で呼んでいた。しかも、彼はそれを当たり前に受け止めている。
まさか……伽耶さんが!? もしかして、あの人が付き合ってる女性だったの?
それにしては、いきなり店に現れた私を見て飲み物を勧めたり、ずいぶん落ち着いた対応をしていた。
でも親し気に課長の名を呼んだのは、彼女としての主張がしたいから?
待って、まだ恋人だとは確定してない。っていうか、私がそんなことを確認する立場なの?
頭の中でごちゃごちゃ考えているうちに駅に到着した。電車を降りると、空はどんよりとして薄暗く、今にも雨が降り出しそう。改札を抜けて駅を出ると、足早に自宅へ向かった。
降り出す前に到着し、ホッとして部屋に入る。外の様子が気になり、窓際へ近付いてカーテンを開けた。強めの雨音が耳に届き、ふと課長の番号を思い出す。
《お疲れ様です。外は雨が降ってきました。おかげで濡れずに到着です》
念のため、帰宅したことをショートメールで送った。シャワーを浴びて戻ってくると、彼から返信が届いてる。
《お疲れ。良かったな》
少し前までは、機械的なやり取りにストレスを感じていた存在が、今はこんな素っ気ない返事が逆に嬉しい。どこか軽やかになった課長との関係で、なぜか業務まで上手くいきそうな気がしてしまう。
そんなの、調子が良すぎるかな……。
今はそう思ったまま眠りにつきたい。急いでシャワーを浴びにバスルームへ向かった。