苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 不思議な感情に包まれたまま、エレベーターで階下に降りる。
 駅のエントランスに出ると、課長が改札口まで送ってくれた。今夜のお礼を伝え、プラットホームへ向かう。

 グラス一杯のアルコールなんて、ほとんど効いてないのに、どこか全身がのぼせているような感覚が続いている。

 しばらく待って到着した電車に乗り込んだ。ドア付近に立ち、車内を見回す。座席には、どこか疲れきったような顔をした乗客たちが電車に揺られている。

 ふとすぐ近くにある窓に視線を送ると、自分の顔がどこか浮かれているように見えた。急に恥ずかしくなり、すぐに口元を引き締める。

 今夜はリラックスして過ごしたせいなのか、時間が過ぎるのが早く感じた。
 もっと会社のことを話せばよかったのかな?

 課長と会うたびに距離が縮まり、苦手意識はいつの間にか薄らいでいる。
 でもきっと、明日会社で彼に会えば、いつも通り鋼鉄の鎧を着込み、その笑顔を封印してしまうんだろうな。そのぐらい予想はついている。けれど今は、そのことが、どこか嬉しい感情へと変化していた。

 もしかして、本当の彼の姿を知っているのは私だけなのかも……。

 そんな秘密めいた喜びが湧き上がる。浮かれてる最中、会社での噂を思い出した。

 ロングヘアーで、年上の女性……。

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