苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 一生懸命な姿勢は伝った。今までの経歴としては心許ないが、商品に対する想いは強い。ただ、決定打がなかった。途中までは平均的な評価だったが、最後に尋ねた時にその認識が変わる。

 芦原は、どこか恥ずかしそうな表情を浮かべ、面接用ではない本当の志望理由を教えてくれた。

「実は……ここのジュエルクッキーが大好きで、よく父にせがんで買ってもらってました。思い出の味なんです。少々おこがましいですが、誰かの心に残る味を作れたら……。そう思ってます!」

 これからのチームに対して、何か強い意志を持つ者がいることは大切だ。数字で割り切ろうとする自分とは正反対の印象を受けた。もしかして、彼女となら新しい一歩が踏み出せるかもしれない。

 面接について、こちらは概ねポジティブな評価を出した。しかし次に進める確約はない。その後、役員面接まで進み、彼女の採用が決まったと聞いた時は嬉しかった。


 そして、いつしか、彼女のことを自分と重ね合わせていた。


 俺は新卒で自動車メーカーに就職し、営業を経験した。だが、人間関係でやり辛さを覚え、コンサル企業へと転職する。そこで企画や経営を学び、HINOコフレからスカウトされ、統括課長のポジションを提示された。

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