苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 イベント会場には可愛らしいテントが設置され、たくさんの商品が並べられていた。今日のメイン商品は、ピスタチオラングドシャとあんバターサンドクッキーだ。

 知り合いの社員を見かけ、近付こうとして思わず足を止める。テント近くにいる男性を見かけ、一瞬ドキリとして素早くその場で背を向けた。

 えっ? ……か、課長!?

 周囲より背が高くスーツを着た男性は、まさしく課長本人だった。
 今日はオフだというのに、まさかこの会場に来ているとは思わない。慌てて人混みに紛れ、会場が見渡せる植栽の辺りまで移動した。

 普通に声を掛ければ済むことなのに、容易にできそうもなかった。
 オフの日なのに、仕事場ばかりをうろつく女性なのかと思われそう。それに毎回、課長の周囲に現れるのも、どこか気まずい。

 声をかけるタイミングを失い、まるで怪しいスパイのように、課長の動きを目で追っていた。

 そっか。常にこういう場所へ顔を出し、客層のチェックや商品の売れ筋を見ているから、いざという時にいいアイデアが浮かぶのかもしれない……。

 こっそり観察しながら、一人で感心していた。
 時々、販促課の社員と言葉を交わしながら、課長の真剣な横顔が印象的に映る。
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