苦くて甘い恋のゆくえ~無機質な堅物上司がメンターですが、本音なんて言えません~

 それと、平日は仕事で作る気も失せてしまう自分のために、カレーを作り置きしたかった。もちろんカレーは、忙しい時の定番手抜きメニューだ。

 お気に入りスーパーは、自宅マンションから少し離れた場所にある。けれども、ここには珍しい外国の食材や製菓材料が揃っているので、気にせず何度も利用していた。

 入口を進み、籠を手にすると、カラフルな商品の元へと向かう。外国産の果物、ドライフルーツ。ナッツ類や、ジャムなど。いつも本来の目的とは関係のないものばかりを手に取り、瓶が可愛い調味料などを買ってしまう。

 そして、今日も風変りな箱入りクラッカーを見つけてしまった。重い食材が入る籠を抱えたまま、棚の上段に置かれている箱へと手を伸ばす。

「あぁっ」

 一つの箱を掴んだ手が、隣の箱にまでぶつかる。落としたと思った瞬間、大きな影がタイミングよくキャッチしてくれた。
 ホッとしてその相手を見ると、メガネの奥から呆れたような眼差しを送っている。

「か、課長……」
「周囲をよく確認しないからこうなる」

 何事もなかったように、平然とキャッチした箱を元に戻してくれた。今、帰って来たのだろうか、先ほど見かけたのと同じスーツ姿だった。
< 75 / 193 >

この作品をシェア

pagetop