勘違いだらけの契約婚
「今日用意したのは南部産の茶葉なんだが、花と果実の香りが人気らしい」
「……とても、美味しいです。上品な香りと味でびっくりしました」
「それはよかった。君の好みに合うかどうか少々、不安だった」
「紅茶にもいろんな風味があるのですね。これほど香り高くて優しい味は初めてです」

 ユージーンがふっと小さく笑う。
 陽だまりのような、柔らかな眼差しを向けられ、気恥ずかしい思いに駆られる。

(わたくしの好みに合わせて選んでくれた茶葉……。ああ、嬉しさで頬がゆるんでしまうわ。こんなに舞い上がってしまって、変に思われたらどうしましょう。情けない顔なんて、見せたくないのに)

 意識すればするほど、頬が熱を帯びる。
 赤くなった顔を隠したくて、ミリアリアはそっと視線を落とした。
 紅い瞳が、カップの中の琥珀の色に反射して揺れている。真っ赤に熟れた林檎よりも鮮やかな赤は、もう忌むべき色ではない。ユージーンが求めてくれた色なのだから。
 テーブルクロスの上には、さりげなく生けられたラベンダーと白い小花が一束、淡い香りを漂わせていた。

(もしかして、このラベンダーもわたくしの髪色を意識して……? ケーキスタンドに載っているお菓子はどれも好物だし、ユージーン様のお優しさに胸が張り裂けそう)
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