勘違いだらけの契約婚
 執務机で書類の決裁をしていたユージーンは、湯浴みも済ませたらしい。全体的にこざっぱりとしている。服も室内用のゆったりとしたものに替わっていた。彼はお茶の手配だけを済ませると、使用人たちを下がらせた。

「待たせたな。人払いも済ませたし、楽に座ってくれ」
「はい。失礼いたします」

 手前のソファに腰かけると、その向い側にユージーンが座る。
 緊張した面持ちで見つめられ、ミリアリアは膝の上に置いた両手をぎゅっと握りしめた。

「俺たちは契約結婚で夫婦になった。跡取り問題を解決するために君が選ばれた。魔力が多い俺のそばにいても体調を崩さない令嬢、それがミリアリアだ」
「体調……ですか?」
「ああ。普通の令嬢は魔力耐性がない。俺の魔力は髪色が黒く変わるほどに強力なものだ。俺が近づけば、何かしら具合が悪くなる。体内で抑えきれない魔力が滲み出ているせいで、結果的に相手に害を及ぼす。長時間、一緒にいることさえ不可能なほどだ。遠巻きに恐れられている原因も同じ理由だ」

 悲しげに目を伏せ、長い睫毛が揺れる。
 今まで、心にもない言葉もたくさんかけられたのだろう。彼の過去が容易に想像できてしまい、ミリアリアは胸が苦しくなった。
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