追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 その新作の本で、好きなシーンやこれからの内容の予想など、旭が入れない程、話が盛り上がった。それを聞いているだけで藍は、嬉しくて仕方がないのだ。これほど盛況だとは思わなかった。

上中下と3冊を予定していたので、1冊目からこんなに評判が良く、新しい2冊目も早々と読み終わる読者にびっくりしていた。

それにしても旭がおとなしいのは、意外だった。藍は嫌な予感がした。急に旭の厳しい声がした。

「さっきから聞いていると佐藤旭の作品を絶賛していますが、何か批判的な考えは無いんですか?」
「あるわけないですよ」1人の女性が怒りの声で言った。
「いいことばかりの人間はいない。どんな作家先生でも、欠点があるはず。あいつはうじうじしていて、いつも暗いし絶望的だ。欠点だらけで醜い心がドロドロした空気を出す。本だって欲があって書いている」
「欠点があっても、私たちは、先生の作品が好きです。欠点かどうかなんて考えたことありません」
「そうです。好きって凄いんですよ。先生の本で私は救われたことがあります。【夢と現実の狭間で】と言う作品は、無力な女性が立ち上がり、彼の心を変えた。その言葉の綴られた一つ一つに一喜一憂しました。こんな私でも何かできるのではと、現状に正面から向き合えるようになったんです」
「私だって」

参加した全ての女性たちは、色々な作品を読んで感動した思い、自分が強くなったと言う自信を語った。藍は旭の体を引っ張り耳元で言った。

「アンチは先生だけですよ。ファンは純粋に先生が好きみたいです。私と同じように」
「…」

最初に自己紹介した小川有希が言う。

「今回の新作は違いますよ。何かキラキラした未来が見えるようん。悲恋でも、その望みを忘れずに見せてくれるのが、佐藤旭先生です」
「ありがとう」
「え、佐藤さんに言っていませんよ。アンチなのもいいです。それだけ先生のこと気になるから、アンチなんですよ。あと羨ましいんじゃないですか?自分に自信を持ってください。世の中捨てたもんじゃないですよ。他人を理解することで、自分が自然と変わります」
「自信を持つよ」
「そうです。私たちの共通点は佐藤先生です。その作品には、自分を見つめること、自分を好きになること、それだけで世界が変わるって書いてあります」
「そうか。忘れていた」
「駄目ですよ。皆も過去の作品を見返してください。前に読んだものと違った視点で、また読めます。新たな自分発見ができます」
「そうですね。私は司会をしていましたが、皆さんで進行して、お話をすすめるが1番理想的です。今回の読書会は神回になりました。私も皆さんと同様に楽しませて頂きました」

司会のスタッフは締めに入った。あっという間の2時間で、参加者の中には、もっと時間が欲しかった。また佐藤旭の作品の読書会をしてほしいと要望があった。

オンラインでないカフェで、お茶会も交えた読書会で催すと主催側は予告して終わった。
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