続 追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 藍はビニール袋から弁当を出して旭にとちらがいいか聞いた。

「とんかつ弁当と唐揚げ弁当どちらがいいですか?」
「唐揚げ」
「さすが先生。唐揚げ弁当は人気ナンバー1なんですよ」
「あ、そう」
「もう機嫌なおしてくださいよ。温かいお茶を入れますね」

藍はお茶のある場所を聞いて、ポットのお湯でお茶をいれた。それを旭の唐揚げ弁当の横に置いた。ふと旭が、がっついて食べる姿を見て、気持ちがいいと思えた。

若い男の子が美味しそうに弁当を食べる景色はとてもいい。その上イケメンとくれば目の保養だと藍は、正面で満足そうに眺めていた。

アイドルを追っかけする人の気持ちが分かる。それはアイドルなみの容姿で人気小説家、佐藤 旭の存在だったから余計だ。一緒に食べる弁当もより美味しいと楽しんでいた。

「何?何かついてる?」
「いいえ、何もついてませんよ。綺麗なお顔がついているだけですよ」
「何おばさんみたいなこと言ってるの?」
「おばさんで結構です。先生の気がおさまるのなら」
「別に怒ってないから」
「それならよかった」

藍はお茶をわざとすすって、おばさんアピールしてみた。旭が笑ったから機嫌がなおったのだと藍もつられて笑った。

ゆるやかな時間が流れて、これはこれでいい感じだと思えた。

 暫くして旭は書斎にこもり、持って来てくれた歴史書をペラペラめくって気になるところを読んでいた。

藍は旭が集中できるように身の回りの世話をした。コーヒーをいれたり、掃除をしたりと、まるで彼氏の家で休日を過ごしている恋人になった錯覚をしてしまいそうた。

「いやいや、同棲している身なのに、この状態は可笑しい気分だわ」

心の声が口に出るのは、歳を重ねておばさん化しているせいだろうかと藍は思った。
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