続 追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 
 それは白藍の姫が初めて旭のために作った料理だった。下働きの女子(おなご)に教えてもらい旭に作ったのだ。

手には切り傷や火傷の跡ができていた。そんな手を見て心配だったが、自分のために作ってくれたのが、嬉しくて仕方がない。

「旭どうじゃ?藍の作った汁は美味しいか?」
「はい、具沢山で美味しいです」
「そうか。良かった」

白藍の姫が一口食べると思わず口から出した。

「何じゃ、これは食べれた物じゃない。旭、無理をするな。食べなくていい。体を壊すぞ」
「旭は姫様の作ってくれたことが嬉しくて仕方ありません。全部いただきます」
「旭は優しいのう。藍は旭に嫁ぐぞ」
「姫様」

白藍の姫はいたずらな笑顔で旭に向かって言った。

「今は2人きりじゃ、白藍でいいぞ」
「早く大人になって旭と夫婦になるぞ」

それは叶わぬ夢と知っていた。だから旭は大人になりたくなかった。子供のままだと白藍の姫と一緒にいられるからだ。

何もいらない。ずっと、このままでいたいと思っていた。そんな叶わぬ夢をみていたいのだ。
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