追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す
 葵は泣きながら走っていた。前が見えなかったせいで、大きな障害物にぶつかった。

「危ないよ」

葵が顔を上げると、ゆうにぶつかったのだ。

「ゆうさん」
「どうしたの?葵ちゃん」
「旭が、旭があの女の人と抱き合っていて、結婚するっていうの」
「ああ、藍ちゃんのことか」
「何故なの。何故、私じゃないの?」 
「旭の想い人だ。ずっと待ってた人だから、藍ちゃんじゃないと駄目なんだ」
「そんなの嫌」 
「本当に好きなんだよ。藍ちゃんのこと。だから諦めようよ。私も旭が好きだから諦めたよ」
「ゆうさん・・・」
「男なのに旭を好きっておかしいでしょ。でもね。好きなものは好きなんだよ。男だからって関係ない。好きは誰にもとめられない。葵ちゃんも旭が好きでしょ」
「ええ、あの女の人より、ずっと前から。あの人より旭のこと好きなのは負けない」
「分かるよ。だから旭の幸せを考えて身を引くの」
「無理」
「本当に好きって、旭の幸せを願うことだと思うの。それは藍ちゃんにしか幸せにできないのよ。私や葵ちゃんでは駄目なの。時間がかかるかもしれないけど、一緒に諦めよう」
「葵、諦めるなんて無理」
「いい女になろうよ、葵ちゃん。旭なんかより、もっと相応しい人いるよ。葵ちゃんを幸せにしてくれる人がね」
「旭がいい」葵はゆうに縋りついて泣いた。
「泣きな。泣きな。思いっきり泣いたらスッキリするよ」

ゆうは優しく葵を慰めた。葵は泣きじゃくり、ゆうの暖かで優しい腕に抱きしめられていた。

藍は2人が話しているところに出くわした。自分が出て行くよりも、ゆうがいてくれることが、葵の慰めになると思った。そして、その場を後にした。
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