酸素の音や香に名をつけて
なんとなく

なんとなく

なんとなく


夜ふと目覚める。なんとなく体が重くて怠いような気がして。涼しい風に浸りたい。俯いたまま歩く。自分の淡い水色のスリッパが急に月に照らされて、空を見上げる。冷たいような、涼しいような風が頬を撫でていく。澄んだ夜色の空は真っ白な月の白さをさらに引き立てる。私の短い髪が風に吹かれて僅かに揺れる。「何してんの」、という声が急に聞こえ、振り向いた先には君がいた。月明かりに照らされた君の横顔は白く、月光を反射している大きな瞳はまるで濡れた石のようだった。再び風が吹いて君の長い青みのかかった髪がさらっと靡く。私の前髪はひっくり返る。「ねえなんかあったんでしょ?」君の瞳がこっちに向く。ぎゅっと唇を噛み締める。「泣きそうで情けない顔」君がポツリと呟く。それが悔しくて、目を堅く瞑る。それでも水漏れはする。息を吸うとひゅっと声が出る。「話してみな」そう言われて、望んでもいない言葉がすらすらと口から溢れる。まるで壊れた水道のように。呼吸が苦しくなる。目から温かい涙が溢れて、風に吹かれて一瞬にして冷める。目の周りが涼しい。「そうなんだ」その一言でどこか安心できた自分がいた。明日も少し生きていける気がした。夜空に輝く無数の星が私を照らしていた。
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