酸素の音や香に名をつけて

レモンスカッシュ



夕立が止んだ頃、ふと外に出歩いてみた。空は濃く澄んだ藍色に染まりかけて西陽が眩しかった。木枯らしが少々吹く季節で木の葉はほぼ散っていた。地面に落ちた紅くなった葉はさっきの雨のせいか僅かに露が乗っていた。なんだか君の作るレモンスカッシュのようだった。グラスについた淡い水滴。飲み干したグラスの底のレモンスカッシュ。何となく似ていた。急に懐かしさが込み上げてきて空を見上げた。君は、今もどこかで幸せに暮らしているのだろうか。もしあの時、僕が君の芸術を___君の感性を否定しなければ_____僕らの最後の会話は明るかったのだろうか_____。後悔がドス黒い波のように襲いかかってきて心を蝕んでいった。もう、遅いか。切ない気持ちになってきて家に引き返すことにした。それから透き通ったものを見るたびに、僕は君の透き通った綺麗な声が耳の中で流れる。
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