こっちを向いて、ヴェルランド。
I【不機嫌な家主】
ここは、とある広大な森の中に位地する小さな村。
この村には古くから言い伝えがある。
「村の奥に佇む古いお屋敷には決して近付いてはいけないよ。夜になるとこわーい魔獣が出てきて人を喰ってしまうからね」
しかし、そんな言い伝えを知らぬ女が1人、大きな門の前に佇んでいた。
彼女の名前はリーリエ・ギモーヴ。この村の人間ではない。先ほどから焦った表情で村に建つ家の戸を叩き続けているが、夜中ということもあって誰も扉を開けてはくれない。
「ご、ごめんください!」
リーリエは今にも泣きそうな表情で扉を叩き続ける。空からは大粒の雨が降りしきり、リーリエの美しい髪を徐々に濡らしていく。
「ご、ごめん下さい!、どなたかいらっしゃいませんか?!」
リーリエはこの屋敷が最後の頼みの綱だと必死に門を叩く。
「お願いします!、開けてください!今にも凍えてしまいそうなんです!ご迷惑はおかけしません!一晩だけ泊めて欲しいのです!」
縋るような声でリーリエは門を叩き続ける。既にこの時点で屋敷の主人にとってみれば迷惑極まりない話であるが今のリーリエにそんなことを気にする余裕は無い。
「お願いします!どうか!どうか!」
リーリエは必死に門を叩き続ける。
しかし、残酷にも扉は一向に開く気配は無い。リーリエの意識が徐々に遠退いていく。
声は枯れ果て、既に掌の感覚は無い。
「お願い…、お願いよ…。誰か、助けて…」
リーリエは門に縋るようにして、地面に力無く座り込むとゆっくりと地面へと倒れ込んだ。
もう、体力の限界だー。
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