こっちを向いて、ヴェルランド。
頭が痛む。
フワフワとした感覚の中、リーリエはゆっくりとその重たい瞼を開く。
目の前には見慣れぬ天井。室内に設置された暖炉には暖かい火が灯り、時折パチパチと音を立てながら室内を温めている。
「…ここは」
リーリエはゆっくりとその場に体を起こす。いつの間にか体には毛布が掛けられ何者かがここまで運んで来てくれたことを知る。
(お屋敷に住んでいる方かしら?)
外観とは違って綺麗に整理された室内は、想像以上に広く人が住んでいる様子が伺える。
リーリエは毛布から抜け出すとその場に立ち上がる。随分と眠っていたのか冷え切っていた体は温まり調子も普段と変わりない。
(家主の方にお礼を言わなくては…)
そう思ったリーリエは毛布を綺麗に畳むと、近くに置いてある燭台に手を伸ばす。幸いなことに取り付けられた大きめの蝋燭には小さな炎が灯っている。
「ごめんください…」
リーリエは燭台を片手に大きな廊下へと出ると、誰かいないか声をあげる。
「あのー…どなたか…」
これだけ大きな屋敷だ。使用人の1人や2人居てもおかしくは無い。
(それとも、もうお休みになられているのかしら?)
よくよく考えると確かに時刻はかなり遅い時間である。皆眠っている可能性は大いにある。
リーリエはそう思い直すと、部屋へと戻ろうとした。
しかし、その時、微かに何者かの視線を感じる。
「…?」
リーリエは再び暗い廊下を蝋燭の光で灯す。しかし、誰かがいる様子は無い。
「気のせい…、かしら…?」
諦めて部屋の扉を閉めようとしたその時ー、
カラン、カランーー
何処かの階から、何かが落下する音が響き渡った。