こっちを向いて、ヴェルランド。
Ⅳ【屋敷の日常】
リヒトが屋敷を去ってからも雨は止むことなく降り続けた。
梅雨の季節にでも入ったのだろうか。相変わらず日が昇る気配はなく、外ではザーザーと雨が降り続けている。
リーリエは一人きりの夕食を済ませると、誰とも話すことなく眠り、そしてまた一人きりで朝食を済ませた。
ヴェルランドとは、あれから特に会うこともなく本当にこの屋敷に一人きりで生活をしているような気分に陥った。
「はぁ…」
リーリエは退屈そうに溜息を吐く。こうも雨が続くと気分も滅入る。しかし、それと同時に晴れてしまうことに恐れも感じていた。
「これからどうしましょう…」
ヴェルランドには、雨が止んだら出ていくと約束したが正直生きて自分の国まで帰れるのか不安で仕方がない。
リーリエは、とある小さな国で生まれ育った。緑が豊かなその国は沢山の花が群生しており、まるで天国かと見紛うほどに美しい国であった。しかし、王国シリウスはその豊かな土壌を自らの支配下に置くため戦争を仕掛けてきた。
お陰で土地は枯れ果て、まだ若かったリーリエは捕虜として兵に囚われてしまった。
(お母様とお父様は無事かしら…)
リーリエは忌まわしい記憶を振り払うように、首を横にふる。
窓の外を見つめると、先ほどから大粒の雨が空から降りしきり大きな窓ガラスを濡らしていく。
(いっそのこと、ここに家政婦として住まわせてもらえたら…)
そんな期待を抱くも、先日のヴェルランドとのやり取りがリーリエの心を曇らせる。
どう考えたって歓迎してくれるようには思えない。
リーリエは今日何度目かわからない溜息を吐くと、再び退屈そうに窓の外眺める。こんなことならリヒトに事情を話して自国まで運んで貰えば良かった。
「でも、王国シリウスの商人に居場所を漏らすのは危険よね…」
そう独り言のように呟くと、不意に広間の扉がドンドン!と大きな音を立てた。
(…誰かしら?)