こっちを向いて、ヴェルランド。

無事に叫びの森を抜けた二人は、ようやくグーグースの元へと戻ると、待ちくたびれた鳥獣は嘴を振動させて二人の帰還を喜んだ。

「ふふ、待たせてしまってごめんなさいね。今ヴェルランドが火をおこしてくれますから」

リーリエはグーグースの嘴を優しく抱きしめると、グーグースは嬉しそうに目を細めて喜んだ。

「それにしても、流石文明の力。こんなにも早く森を抜けられるなんてー。」

辺りは未だに暗いが、僅か十五分ほどで森を抜ける事ができたのは他でもないスマホのお陰である。

「あぁ。確かに森を抜けられたのは良かったが、これで居場所は割れてしまった」

ヴェルランドは火をおこしながら眉間に皺を寄せて答える。

「でも今直ぐに追いかけてはこないでしょう?」

「…さぁな」

「怖がらせるのはやめて頂戴な…」

「別に怖がらせてなどいない。ただ相手はゼロ部隊だ。用心に越した事はない」

ヴェルランドはようやく火をおこし終わると、その場で胡座を描いて何やら鞄の中を探り始めた。

「さて、少し遅くなったが夕食の準備に取り掛かろう…、苦手な食材はあるか?」

「ピーマンと、にんじんが苦手です」

ヴェルランドはその発言に、動かしていた手を止める。

「お前は、子供か?」

「失礼な。一応大人です」

リーリエは不満気に答える。

「…残念ながら今から作る物にはどちらも含まれる。残さず食べるんだぞ」

ヴェルランドは鞄から取り出した食材を丁寧に切り分けると、それを小さな鍋へと放り込んでいく。

「わざわざ、お野菜なんて持って来たのですか?」

「少量だが、肉もある」

ヴェルランドはそう言うと鞄から切り分けられた肉を取り出して見せる。

「…そんな手間かけずとも、もっと適当な物で良かったのでは?」

例えば、パンやチーズなど幾らでも保存のきく食べ物はあった筈だ。

ヴェルランドはそんなリーリエの問いかけに小さく咳払いをする。

「…どうせ最後の旅なのだろ?」

リーリエはその言葉に黙り込む。

「ならば、最後くらいは上手い物をと思ったまでだ」

「…そう、ですか」

彼がもっと横暴で自分勝手な男だったらよかったのに。

リーリエは困った様に微笑む。

「このまま、カノープスには行かずに二人でどこか遠くに行きたいわ…」

リーリエの呟きにヴェルランドは思わず料理をしていた手を止める。

「ねぇ、どうかしら?二人でどこかに家を借りて二人で生活するの。お金のことなら心配いらないわ。だって私魔法を使えるもの。それに、料理だってこれからー」



「やめろ」



ヴェルランドは酷く落ち着いた声色でリーリエの話しを遮る。


「お前は、私を揶揄っているのか?」

どこか怒っている様なヴェルランドの問いかけにリーリエは黙り込む。

「私は、女とは暮らさない。永遠に一人だ。その覚悟は出来ている。それにお前は私から見ればまだまだ子供だ。残念ながら恋愛対象にはならない。わかったな…」


恋愛対象にはならないー。


リーリエはこの言葉に素直に傷つく。


「…料理ができるまで少し時間が掛かる。その間グーグースにこれをやってくれ、専用の餌だ」

ヴェルランドは小袋を鞄から取り出すとそれをリーリエへと渡した。

「わかりました…」

リーリエは一言そう返すと、それ以上は何も話さなかった。




(私は、リリィ王女にはなれないー。)

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