こっちを向いて、ヴェルランド。
ⅩⅩⅠ 【花の丘】
ヴェルランド達が叫びの森を抜けたのは随分と陽が傾いてからの事だったー。
「…不味いな、想像以上に時間がかかった」
ヴェルランドは小さな声でそう呟くと、グーグースから降りる。
「だが、約束だ。予定通り少し休もう…」
ヴェルランドはそう言うと、リーリエに手を差し伸べる。
「まぁ…想像通り綺麗な場所ね」
リーリエはグーグースから降りると、辺りを見渡して溜息を吐いた。
花の丘と言われるだけあって、辺り一面には花が咲き誇り、二人の事を静かに歓迎している。
「リーリエ、こちらへ来い」
ヴェルランドはリーリエを手招きすると、一際花が咲き乱れている場所へと案内する。
「まぁ…」
色とりどりの花が咲き乱れ、花吹雪が舞う情景はまるで絵画の様に美しい。
「凄い、こんなに綺麗な場所があるなんて…」
リーリエはゆっくり深呼吸をすると、嬉しそうに色とりどりの花を見つめる。
「ここは、人の管理が行き届かない場所。故に様々な花がそれぞれの生態系の元咲き乱れている珍しい場所だ」
ヴェルランドはそう言うとグーグースを座らせ自身もその場に座り込む。
「まぁ、お詳しいのね。リリィ王女も気に入っていたのかしら?」
「…まぁな、護衛時代によく連れ出された」
「本当は、お花に詳しいのではありませんか?」
その言葉にヴェルランドはゆっくりとリーリエを見つめる。
「何故そう思う」
「だって、貴方って真面目な性格ですもの。好きな女性が花好きなら図鑑を全部暗記してきそうではありませんか。屋敷にも植物図鑑がありましたし」
彼のものかは不明だが、きっとあの場所で何度も目を通したに違いない。愛おしい誰かのためにー。
「…ふん、中々の観察眼だな。確かに以前、覚えはしたがもう忘れてしまった」
リリィがダンゼルの正式な妻になった時、ヴェルランドは護衛意外の彼女に関する全てのことを辞めた。
贈り物をすることも、花の名前を覚えることも、手紙を書くことも、触れ合う事も。
黙り込んでしまったヴェルランドにリーリエは小さく咳払いをする。
「で、では、リリィ王女が好きそうなお花を探しましょう。さすがに何色が好きとか覚えてるでしょ?」
リーリエはヴェルランドの顔を覗き込む。
「…赤色をよく好んでいた」
「赤色…、有名どころだと薔薇とか、カーネーション、あとガーベラとかかしら?」
リーリエは周囲を見渡して赤い色の花を探し始める。
「…あ!こんなのはどうかしら?」
リーリエは一本花を摘むと、それをヴェルランドへ見せる。
「…アネモネか」
「何だ。まだ覚えているではありませんか、そう、花言葉はー」
「君を愛す。燃え上がる情熱…だったな」
ヴェルランドはアネモネを手に取ると何かを懐かしむ様に優しく微笑む。
「…」
リーリエはそんなヴェルランドの表情に心を射抜かれる。自分の前では決して見せない表情。その優しい表情がどうしようもなく愛おしいと想ってしまった。
「…どうした」
「あ、いえ…。やっぱりお詳しいではありませんか…」
リーリエは少し残念そうに、ヴェルランドの側へと座り込むと何度目かわからない溜息を吐いた。
「…有名な花だ。これくらいは覚えている」
「…そうですか、さすが元クイーンハウンド」
「…すまない、何か気に障ったか?」
しゅんと落ち込んでしまったリーリエヴェルランドはどこか慌てた様に謝罪する。
「い、いえ!気にしないで下さい。でもそれなら私がわざわざ教える必要はなさそうですね…」
リーリエのその言葉にヴェルランドは何やら思案すると、突然その場に立ち上がった。
「…少し、ここで待っていろ」
そう言ってどこかに姿を消してしまったヴェルランドにリーリエは小首を傾げる。
数分後、ヴェルランドは手に幾つもの花を持って姿を現した。
「…白いお花?」
すると、ヴェルランドは再びリーリエの横へと腰掛けた。
「リリィ王女に?」
リーリエは何となしに尋ねてみる。
「まぁ、待っていろ…」
ヴェルランドが何をしようとしているのか理解できずにリーリエは小首を傾げる。
すると、ヴェルランドは摘み取ってきた花を器用に編み込み始めた。
(…?)
そして、ようやく編み込んだ花が綺麗な輪になるとヴェルランドは静かにそれをリーリエの頭へと置いた。
「…え?」
「フン、やはりよく似合うな。お姫様」
「ヴェルランド…」
リーリエはその言葉にようやく彼が何をしたかったのかを理解する。
「…いいのですか?」
「何がだ?」
リーリエはそっと花冠を脱ぐ。
「私が、私がこんな素敵なものをもらってしまって…」
白で統一された花冠には、かすみ草やストック、スズラン、レースフラワーなどが顔を出している。
「いいも何も、私からの礼だ」
ヴェルランドはそう言うと、そっぽを向く。何か気まずい事でもあったのだろうか。
「礼だなんて、私何もしてないわよ?」
「お前は充分すぎるくらい、私に夢を見せてくれた」
「…夢?」
すると、ヴェルランドは再び視線を戻す。
「あぁ…、今は亡きリリィとの思い出を思い出させてくれた…」
リーリエはその言葉に、瞳を伏せる。
そうか、彼は私の中にいるリリィ王女にこの花冠を作ったのだー。
私に作った訳ではないー。
リーリエは溢れそうになる涙を堪えながら、手に持った花冠を再び自身の頭に乗せる。
「…ねぇヴェルランド」
「…何だ」
「…こっちを向いて」
「…向いている、が?」
リーリエの言葉にヴェルランドは怪訝そうに首を傾げる。
「…ちゃんと向いて頂戴」
「リーリエ?」
「ちゃんと…」
こっちを向いてよ、ヴェルランドー。
「…不味いな、想像以上に時間がかかった」
ヴェルランドは小さな声でそう呟くと、グーグースから降りる。
「だが、約束だ。予定通り少し休もう…」
ヴェルランドはそう言うと、リーリエに手を差し伸べる。
「まぁ…想像通り綺麗な場所ね」
リーリエはグーグースから降りると、辺りを見渡して溜息を吐いた。
花の丘と言われるだけあって、辺り一面には花が咲き誇り、二人の事を静かに歓迎している。
「リーリエ、こちらへ来い」
ヴェルランドはリーリエを手招きすると、一際花が咲き乱れている場所へと案内する。
「まぁ…」
色とりどりの花が咲き乱れ、花吹雪が舞う情景はまるで絵画の様に美しい。
「凄い、こんなに綺麗な場所があるなんて…」
リーリエはゆっくり深呼吸をすると、嬉しそうに色とりどりの花を見つめる。
「ここは、人の管理が行き届かない場所。故に様々な花がそれぞれの生態系の元咲き乱れている珍しい場所だ」
ヴェルランドはそう言うとグーグースを座らせ自身もその場に座り込む。
「まぁ、お詳しいのね。リリィ王女も気に入っていたのかしら?」
「…まぁな、護衛時代によく連れ出された」
「本当は、お花に詳しいのではありませんか?」
その言葉にヴェルランドはゆっくりとリーリエを見つめる。
「何故そう思う」
「だって、貴方って真面目な性格ですもの。好きな女性が花好きなら図鑑を全部暗記してきそうではありませんか。屋敷にも植物図鑑がありましたし」
彼のものかは不明だが、きっとあの場所で何度も目を通したに違いない。愛おしい誰かのためにー。
「…ふん、中々の観察眼だな。確かに以前、覚えはしたがもう忘れてしまった」
リリィがダンゼルの正式な妻になった時、ヴェルランドは護衛意外の彼女に関する全てのことを辞めた。
贈り物をすることも、花の名前を覚えることも、手紙を書くことも、触れ合う事も。
黙り込んでしまったヴェルランドにリーリエは小さく咳払いをする。
「で、では、リリィ王女が好きそうなお花を探しましょう。さすがに何色が好きとか覚えてるでしょ?」
リーリエはヴェルランドの顔を覗き込む。
「…赤色をよく好んでいた」
「赤色…、有名どころだと薔薇とか、カーネーション、あとガーベラとかかしら?」
リーリエは周囲を見渡して赤い色の花を探し始める。
「…あ!こんなのはどうかしら?」
リーリエは一本花を摘むと、それをヴェルランドへ見せる。
「…アネモネか」
「何だ。まだ覚えているではありませんか、そう、花言葉はー」
「君を愛す。燃え上がる情熱…だったな」
ヴェルランドはアネモネを手に取ると何かを懐かしむ様に優しく微笑む。
「…」
リーリエはそんなヴェルランドの表情に心を射抜かれる。自分の前では決して見せない表情。その優しい表情がどうしようもなく愛おしいと想ってしまった。
「…どうした」
「あ、いえ…。やっぱりお詳しいではありませんか…」
リーリエは少し残念そうに、ヴェルランドの側へと座り込むと何度目かわからない溜息を吐いた。
「…有名な花だ。これくらいは覚えている」
「…そうですか、さすが元クイーンハウンド」
「…すまない、何か気に障ったか?」
しゅんと落ち込んでしまったリーリエヴェルランドはどこか慌てた様に謝罪する。
「い、いえ!気にしないで下さい。でもそれなら私がわざわざ教える必要はなさそうですね…」
リーリエのその言葉にヴェルランドは何やら思案すると、突然その場に立ち上がった。
「…少し、ここで待っていろ」
そう言ってどこかに姿を消してしまったヴェルランドにリーリエは小首を傾げる。
数分後、ヴェルランドは手に幾つもの花を持って姿を現した。
「…白いお花?」
すると、ヴェルランドは再びリーリエの横へと腰掛けた。
「リリィ王女に?」
リーリエは何となしに尋ねてみる。
「まぁ、待っていろ…」
ヴェルランドが何をしようとしているのか理解できずにリーリエは小首を傾げる。
すると、ヴェルランドは摘み取ってきた花を器用に編み込み始めた。
(…?)
そして、ようやく編み込んだ花が綺麗な輪になるとヴェルランドは静かにそれをリーリエの頭へと置いた。
「…え?」
「フン、やはりよく似合うな。お姫様」
「ヴェルランド…」
リーリエはその言葉にようやく彼が何をしたかったのかを理解する。
「…いいのですか?」
「何がだ?」
リーリエはそっと花冠を脱ぐ。
「私が、私がこんな素敵なものをもらってしまって…」
白で統一された花冠には、かすみ草やストック、スズラン、レースフラワーなどが顔を出している。
「いいも何も、私からの礼だ」
ヴェルランドはそう言うと、そっぽを向く。何か気まずい事でもあったのだろうか。
「礼だなんて、私何もしてないわよ?」
「お前は充分すぎるくらい、私に夢を見せてくれた」
「…夢?」
すると、ヴェルランドは再び視線を戻す。
「あぁ…、今は亡きリリィとの思い出を思い出させてくれた…」
リーリエはその言葉に、瞳を伏せる。
そうか、彼は私の中にいるリリィ王女にこの花冠を作ったのだー。
私に作った訳ではないー。
リーリエは溢れそうになる涙を堪えながら、手に持った花冠を再び自身の頭に乗せる。
「…ねぇヴェルランド」
「…何だ」
「…こっちを向いて」
「…向いている、が?」
リーリエの言葉にヴェルランドは怪訝そうに首を傾げる。
「…ちゃんと向いて頂戴」
「リーリエ?」
「ちゃんと…」
こっちを向いてよ、ヴェルランドー。