こっちを向いて、ヴェルランド。
ⅩⅩ【お願い】
ヴェルランドに宥められ、ようやく泣き止んだリーリエは一人ぼんやりと流れていく景色を見ていた。

(カノープスは今どんな状況かしら…)

リーリエは静かに瞳を閉じる。魔法が使えるにしてもやはり兵器の数や人数が違いすぎる。

(…負けちゃうのかな)

そう考えると再び目頭が熱くなっていく。どうにも最近情緒が安定しない。

「リーリエ」

一人静かに、鼻を啜りながら瞳を潤ませていると再び背中越しに声をかけられる。

「…今度は何ですか」

「…大丈夫か?」

「大丈夫に見えます?」

「…」

リーリエはヴェルランドに寄りかかりながら、何度も啜り泣く。せっかく泣き止んだと言うのにこれではしつこい女に見られてしまう。

「勘違いしないで下さい。私が今涙しているのは国を想ってのことです。貴方の事で泣いているのではありません」

何だか言い訳がましく聞こえてしまうのはこの際仕方がない。

「…不安か?」

「はい。とても…」

「気休めかもしれないが、シリウスで魔法が使えるのはダンゼルのみ、カノープスの民には到底及ばない。それにゼロ部隊と兵の一部は我々の事を血眼で探しているはずだ。直ぐにお前の国が負けると言うことは考えにくい…」

どこか励ますように、戦況について分析するヴェルランドにリーリエは苦笑する。

「今は…そうでしょうね…。でも十年先まではわかりません…」

「…そうだな、すまない」

ここで変に励ましたりしないのは彼がその道のプロである証拠だ。ヴェルランドには戦いの残酷さがよくわかっている。

「…ヴェルランド」

「何だ」

「貴方の事を諦めてあげる代わりに一つお願いがあるの…」

「言ってみろ」

ヴェルランドは前を見つめたまま、尋ねる。

「…私の肉体が滅んで魂が星へと帰ったら、花を生けに来てちょうだい」

「…」

「そしたら私、きっと成仏できると思うから」

リーリエお願いにヴェルランドは何と答えて良いのか黙り込む。

「そしたら私、あの世でリリィ王女に貴方の気持ちを伝えてあげる。彼はこんなにも貴方の事を愛していましたよって」

「…」

「ね?お願いよ。一輪でいいの。綺麗なお花。貴方が選んでくれたものなら何でも…」

「私は…花にあまり詳しくない…故にリリィにも花を手向けたことは無い…」

再び話を遮ったヴェルランドにリーリエは残念そうに微笑む。

そうか、彼はまだリリィ王女の死を受け入れられないのだ。

「…じゃあ、花の丘に着いたら私が教えて差し上げます。それなら問題ないでしょ?」

そしたらきっとリリィ王女にだってお花を生けてあげられる筈だ。


(だからお願いね、ヴェルランド)


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