こっちを向いて、ヴェルランド。
「いいか?女には当てるなよ。彼女は俺が保護する」
アルベルトは耳にかけた端末越しに指示を出す。先程リクとやりとりしていた時代錯誤なトランシーバーはゼロ部隊以外の相手とは利用しない決まりとなっている。
やっと、リーリエからあの男が離れた。保護するなら今しかない。
アルベルトは銃を構えると東側へと逃げたリーリエの後を追いかける。
しかし、道半ばで何者かが行手を阻んだ。
(何だ?)
突然辺り一体が黒い霧に包まれるとアルベルトはその場に足を止めた。
「…何者だ?魔法使いの類か?」
アルベルトは冷静に銃を構え周囲に気配を張り巡らせる。すると、黒い霧の中から不気味な男の声が響いた。
「これは、死に損ないのアルベルト…」
男は低く落ち着いた声でそう呟くと、黒い霧から姿を現した。
「…ダンゼル陛下!」
アルベルトは突然現れた君主に驚きの表情を見せると、慌ててその場に敬礼する。
「な、何故こちらに」
「…見つかったのだろう?愚かな花嫁が」
ダンゼルは黒いローブを靡かせながら悠然とアルベルトの周りをぐるりと回る。
「えぇ…。ですが、まだこれから捉えるところです」
変な汗をかきながらもアルベルトは毅然とした態度で答える。
「ほう、では私は先に化け物退治でもしておくか…」
「化け物退治…ですか…」
アルベルトの言葉にダンゼルはニヤリと微笑む。
「今宵は満月…頼みの女は東へ行った…、あの化け物にもう頼れる加護はない…そうだとは思わないか?」
「ヴェルランドのことですか…」
回りくどい言い方に、アルベルトは顔を顰める。
「あの男とは浅からぬ因縁がある。今度こそ確実に息の根を止めてやる…」
ダンゼルはそう吐き捨てると、再び黒い霧の中へと姿を消した。