こっちを向いて、ヴェルランド。
ⅩⅩⅣ【囚われた姫】
ここはダンゼルの屋敷内にある地下牢。

リーリエは鉄格子の牢へと入れられるとその重たい牢の扉をガチャリと閉められた。

「すまないが、しばらくここにいてくれ…」

アルベルトは少し申し訳なさそうに、そう伝えると檻越しにリーリエの頬へと触れようとする。
しかし、リーリエは分かりやすくそれを拒むと、アルベルトから距離を取った。

「…すぐに、ここから出してやる。だから俺を拒むな」

「まぁ、随分と自分勝手な言い分だこと…。どうせ出た所で私はダンゼルの妻になるのです…。その苦しみが貴方には分かりますか?」

リーリエは淡々とした口調で話しながら牢の奥に備えられた簡素な椅子に座り込む。

「もう、私に逃げる場所はありません。それにヴェルランドだって…」

リーリエはダンゼルにとどめを刺されたであろうヴェルランドの事を思い出す。

とても、優しい人だった。

それに真面目で実直でもあった。

最後まで、リリィ王女の事を想う彼の姿はダンゼルとは似ても似つかない。

リーリエは静かに涙を流す。

最後まで自分の事は見てもらえなかった。

それでも彼が自分にしてくれた優しさは、ちゃんと覚えてる。

もう二度と彼に会う事が出来ない事がこの上なく悲しかった。

「…ッ…」

鼻を啜りながら泣き始めたリーリエにアルベルトは視線を逸らす。

「婚姻の儀は明日行うそうだ…。それまで少し休むといい」

「もう、出て行って…」

リーリエは両膝に頭をうずめると、もう話したく無いと言った様子で本格的に泣き始める。

「…何かあれば直ぐに呼んでくれ」

「…」

「俺はお前の味方だ、だからー」

「出て行って!って言ってるでしょ!!」

珍しく声を張り上げて怒るリーリエにアルベルトはようやく黙り込むと、静かにその場を後にした。
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