浮気調査を依頼した敏腕弁護士が、傷心の私を溺愛して離してくれません
むしろ、一人じゃないことにほっとしている自分がいた。

しばらくして、温かいマグカップが差し出される。

「……ありがとうございます」

「甘い方が落ち着くかと思って」

ココアだった。

その優しさが胸に沁みる。

私は両手でカップを包み込みながら、小さく息を吐いた。

日向先生は少し離れた場所へ座る。

近づきすぎない距離。

その気遣いが、余計に優しかった。

「……先生」

「はい」

「どうして、ここまでしてくれるんですか」

思わず聞いてしまった。

依頼人だから。

きっとそう返されると思った。

けれど日向先生は少し黙ったあと、静かに言った。

「放っておけないからです」

その声に、胸が跳ねる。

私は視線を落とした。

こんな状況なのに。

失恋したばかりなのに。

どうしてこの人の言葉に、こんなに心が揺れるんだろう。
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