乙女ゲームの親友ポジに転生した天才チート系令嬢、ストーリーのそのあとの方が大変だった件

「そういう人の説得をお任せしたいのですが」
「もちろん。民を安全なところに住まわせるのは、族王として当然の務め。……守ることのできなかった民の分まで、私は生きている民を護り導かなくてはならない――」

 責任感が強い人だ。
 これは魔王が誕生してからの国の混乱、相当にしんどかっただろうな。
 今も自分を強く責めているようにしか見えない。
 魔族であれば汚染魔物との相性が悪いのは仕方ないのだ。
 彼がどんなに魔族の中で強くても、当時肉体が衰えていた彼にはともかく手の届く範囲だけは、と思うのは当たり前だと思う。
 いや、彼に限らず私たちも。
 目の前で、手の届く範囲の人たちしか助けられなかった。
 いくらそれがストーリーの通りなのだとしても。
 私たちは魔王を倒せたけれど、私たちが知らないだけで魔族国はそれほどまでにボロボロにされている。
 私たちのせいじゃない。
 でも、悔しさはある。
 すべて守れるわけじゃないのはわかっていたけれど。
 ディブレは魔族国の族王として、私たちよりもずっと責任を感じている。
 あなたのせいじゃないと言いたいけれど、私が言ってもきっと伝わらないんだろうな。
 それなら、やはり彼に前を向いてもらうしかない。

「街道を作るのは私にお任せください。まずはこのアガレスとアーレシュア王国との国境の町、ディニーラとの街道を作る許可をいただけませんか? 物資や食糧を支援してくれるそうなのです。道があれば効率よく支援物資が運べますもの」
「街道を……? それはありがたいが、まさかお一人で……?」
「私はアーレシュア王国国王の命で魔族国の復興支援のために派遣されているのです。このくらいのこと、私にさせてくださいませ。もちろん、ディブレ陛下が他にしてほしいと思うことがあるのでしたら、そちらを優先いたしますが……がなんにしてもまずは道でしょう。支援を受け取るにしても、国中の民を一度安全なアガレスに集めるにしても。いかがですか?」
「確かに」

 顎に手を当てて考え込むディブレ。
 そして少しの間考えた結果、「お願いします」と頭をさげられた。
 よっしゃ、族王様の許可ゲット。
 あとはトントン、一応文書での許可を作ってもらい、地図と照らし合わせて道を作る場所を朝まで話し合った。
 魔力もガッツリ補給できたので、翌朝から地図を参考にまずはアガレスの周辺を整えることにした。
 [大地重圧]の魔法で大地を整地。
 いやぁ、魔力全開で魔法を使い放題なのたーのしーい♪

「え、ええと……レイス嬢……?」
「なにかしら?」
「レイス嬢はあのー……別に魔法師ではないんですよね? 普通のご令嬢、なんですよね?」
「そうね。母が王姉であること以外は、基本的に普通の令嬢という区分で間違いないのではないかしら?」

 移動の手伝いのために馬車と馬を連れてきたアーカーとエルワーズに、なぜかドン引きの表情をされる。
 私の――レイス・トゥワイエット公爵令嬢は叔父が国王という以外は普通の令嬢。
 主人公たちが貴族学園に入学してきたら、平民の彼らが貴族社会に少しでも馴染めるようにサポートしてくれる。
 しかし、平民であることと貴族に馴染むことは水と油に等しい。
 平民――プレイヤーの感覚からレイス・トゥワイエットの手を取らず、助言を聞かなければ彼女は主人公の味方をやめて『ライバル令嬢』……明確に敵対すれば『悪役令嬢』となる。
 すべては主人公の選択肢次第。
 まあ、私がレイスに転生して主人公ズに寄り添う(・・・・)ことにしたから、あの二人はそんな選択を取らなくてもよかったみたいだけれど。

「普通のご令嬢は上級広範囲攻撃土魔法を使ったりしないのですが、ご存じですか?」
「まあ……」

 それはわかる。
 しかし、レイスは普通ではない。
 アーレシュア王国をはじめ、人間の国々でも王族は基本的に一般貴族よりも魔力が多く生まれてくる。
 それは国を治める一族への、世界からのご加護だそうだ。
 主人公が『聖者の紋章』を持って生まれてくるように、国を治める王族には『王の紋章』が受け継がれ、それには膨大な魔力を与え、操る力が宿っている。
 その器となる王族の血脈は、生まれながらに魔力が多い、というわけだ。
 私の母は正統な王族。公爵家に輿入れしたとはいえ、レイス・トゥワイエットはその正統な血筋に含まれる。
 ……あれ? 私が割とおかしいのか? それじゃあ。

「でも私はほら、あのー、一応魔王討伐の旅に、ルナーシャとアルカに同行した身だから。他の令嬢よりは攻撃魔法が得意というか」
「いやいや、いやいや」
「そこじゃないですよ。基本的に火魔法と土魔法の上級は三人以上(・・・・)で使用する前提なんですよ」
「え? そうなの?」

 それは初めて知った。
 ルナーシャもアルカも聖魔法しか使えないから、戦闘生活その他諸々旅の最中に使う魔法は私が担当していたから。
 言うて汚染魔物は魔法に耐性が高いので、私はもっぱら身体強化で最前線で剣を振ったり槍で突いたりしていたから攻撃魔法の匙加減なんてよくわからない。
 ただ魔王が放った広域大魔法攻撃の痕跡による大地の穴を潰して整地するのに、[大地重圧]が一番適していた。
 ただそれだけの話なのだけれど……。

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