同じ家なのに君は遠い
第1章

知らない同居人

四月。

春になったはずなのに、風はまだ少し冷たかった。

制服の袖口から入り込む空気に肩をすくめながら、雪村天音は住宅街の坂をゆっくり歩く。

右手には、大きなキャリーケース。

見慣れない道。

見慣れない景色。

そして、今日から住むことになる“知らない家”。

(……ほんとに、ここで合ってるんだよね)

スマホの地図を確認する。

表示された住所と、目の前の表札を何度も見比べる。

間違いない。

ここが、今日からの“帰る場所”。

そう思っても、実感はなかった。
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