わたし、まだ話してる。

第一章 帰り道

彼と初めて会ったのは、クリスマスイヴの次の日だった。

十二月二十五日。

街にはまだ、イヴの残り香みたいな浮ついた空気が漂っていた。

駅前の居酒屋で開かれた合コン。

油の匂いとアルコールの熱気が混ざる店内で、彼はひときわ目立っていた。

背が高かった。

黒いタートルネックにチェスターコート。
年齢のわりに清潔感があって、妙に色気があった。

いわゆる、“イケおじ”だった。

ただ、第一印象は正直あまり良くなかった。

かなり酔っていたからだ。

声が大きい。
笑い方も大きい。
店員を呼ぶ声まで大きい。

私は内心、

“うわ、酔っぱらいだ”

と思っていた。

十歳年上なのに、少し子どもっぽく見えた。

でも、不思議と嫌な感じはしなかった。

人懐っこいというか、壁がないというか。

彼はずっと楽しそうに話していた。

「それめっちゃわかる」
「俺もさ、それ思う」

今思えば、あの頃から彼は、“相手を知りたい”というより、“自分の考えを返したい”人だったのだと思う。

でも、その時の私はまだ気づいていなかった。
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