わたし、まだ話してる。
年が明けて少し経った頃、彼から連絡が来た。

「ライブ行かない?」

彼の好きなバンドだった。

私はそこまで詳しくなかったけれど、なんとなく断らなかった。

待ち合わせ場所に行くと、彼はもう先に来ていた。

冬の駅前。
吐く息が白い。

彼は長い脚を軽く組むようにして壁にもたれ、スマホを見ていた。

背が高いから、それだけで少し目立つ。

「あ、お疲れ」

顔を上げた彼は、合コンの日と別人みたいに静かだった。

声が小さい。

私は思わず笑ってしまった。

「え、今日めっちゃ静かじゃない?」

すると彼は少し照れたように笑って、

「あの日、酔いすぎてた」

と言った。

私はその瞬間、少しだけ警戒心がほどけた。
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