わたし、まだ話してる。
ある日、彼の友達と三人で飲んでいた。

友達が転職の話をし始めた。

「実はさ——」

そう言いかけた瞬間、彼が口を開いた。

「こいつ昔からそういうとこあるんだよ」

友達は苦笑いした。

私は少しだけ胸が苦しくなった。

“今、その人のターンなのに”

と思った。

でも彼は気づいていない。

そのあとも彼は、自分の分析を話し続けた。

私は途中で、

「それで、どうなったの?」

と友達に話を戻した。

彼はまた話し始める。

私はまた戻す。

誰も気づかないくらい自然に。

私は気づけば、ずっと会話の交通整理をしていた。
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