優しさは、俺だけに
追いつきたかった人
誰に言うでもなく、
心の中で、そう言い聞かせた。
転勤当日。
出勤すると、
支店長が早々と行報に目を通していた。
「森脇」
名前を呼ばれ、そのまま応接へと入る。
静かな空間の中で、
転勤を命じられた。
新天地は、C支店。
そして、営業主任への昇進。
「森脇、頑張ったな。
その結果が、ちゃんと出ている」
支店長の言葉に、思わず背筋が伸びる。
認められた――
そう感じて、素直に嬉しかった。
C支店は、
前川さんの住む方面だった。
……何考えてんだ、俺は。
そんなことが真っ先に浮かんだ自分に、
小さく呆れる。
簡単に気持ちを切り替えて、
応接を出た。
執務室を見まわすと、
すぐに前川さんと目が合う。
前川さんが、口をパクパクさせている。
――転勤?
声には出ていないのに、はっきり分かった。
思わず、少しだけ笑ってしまう。
それから、静かに――
「はい」
そう伝えるように、頷いた。
「禅君、すごいじゃん。
主任で、C支店だなんて。期待されてる証拠よ」
「そんなことないですって」
そう言いながらも、どこかくすぐったい。
「でも、前川さんと同じ主任になれて、
嬉しいです。やっと追いついたんで」
そう言うと、前川さんは少しだけ驚いた顔をして、すぐに笑った。
「もう、先輩づら出来ないのか。残念」
軽く肩をすくめるその仕草に、
いつもの空気に戻った気がした。
「前川さん、
今日は、飲みに誘ってください」
心の中で、そう言い聞かせた。
転勤当日。
出勤すると、
支店長が早々と行報に目を通していた。
「森脇」
名前を呼ばれ、そのまま応接へと入る。
静かな空間の中で、
転勤を命じられた。
新天地は、C支店。
そして、営業主任への昇進。
「森脇、頑張ったな。
その結果が、ちゃんと出ている」
支店長の言葉に、思わず背筋が伸びる。
認められた――
そう感じて、素直に嬉しかった。
C支店は、
前川さんの住む方面だった。
……何考えてんだ、俺は。
そんなことが真っ先に浮かんだ自分に、
小さく呆れる。
簡単に気持ちを切り替えて、
応接を出た。
執務室を見まわすと、
すぐに前川さんと目が合う。
前川さんが、口をパクパクさせている。
――転勤?
声には出ていないのに、はっきり分かった。
思わず、少しだけ笑ってしまう。
それから、静かに――
「はい」
そう伝えるように、頷いた。
「禅君、すごいじゃん。
主任で、C支店だなんて。期待されてる証拠よ」
「そんなことないですって」
そう言いながらも、どこかくすぐったい。
「でも、前川さんと同じ主任になれて、
嬉しいです。やっと追いついたんで」
そう言うと、前川さんは少しだけ驚いた顔をして、すぐに笑った。
「もう、先輩づら出来ないのか。残念」
軽く肩をすくめるその仕草に、
いつもの空気に戻った気がした。
「前川さん、
今日は、飲みに誘ってください」