図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~

第1話:ファンは、学校一の有名人

校舎に響く吹奏楽部の音色や、
グラウンドから風に乗って届く掛け声。


窓の外には、何かに熱中する「眩しい」同級生たちの姿がある。


どこにも居場所を見つけられなかった私は、
逃げるように放課後の図書室へと足を踏み入れた。

古い紙の匂いと、埃の舞う、本に囲まれた部屋。

ここだけが、私の呼吸を許してくれる唯一の聖域だ。


『……よし、書こう』


カバンから取り出したスマートフォン。


その画面の中には、誰にも、親にも親友にも明かしていない「本当の私」が息づいている。


ペンネームは、涼風璃杏。

現実の私は、目立たないように、嫌われないように、ただ息を潜めているだけの「水越ふうか」だけど。


この画面の中だけは、私はどんな世界へも行けるし、どんな言葉だって紡ぐことができた。

けれど、指先がキーボードの上で迷う。


『本当に、これでいいのかな……』


自分の書く物語に自信なんてない。

どこかで見たような、誰かの二番煎じのような気がして、書くたびに自分の心臓が不安で小さく縮こまる。


それでも、書くことをやめられないのは、この孤独な執筆だけが、私が私でいられる唯一の証明だったから。

誰もいないはずの図書室の奥。

物語の迷路に迷い込んでいた私は、背後に忍び寄る「運命の足音」に、まだ気づいていなかった。
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