図書室のゴーストライター ~放課後の図書室で、私たちは世界を書き換える~

『ここは改行して、読みやすいように……あとは、主人公の気持ちを分かりやすく……』


ボソボソと独り言をこぼしながら、私はスマートフォンの画面の中に自分だけの世界を築き上げていた。

外の世界の喧騒をシャットアウトして、一文字ずつ大切に「涼風璃杏」としての言葉を紡いでいく。

……その、平穏が壊れたのは一瞬だった。


「……涼風璃杏って、あなたですか?」


背後から突き刺さったのは、図書室の静寂を切り裂くような、低くて透明な響き。

その名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ね上がり、肺から酸素がすべて抜き取られたような錯覚に陥る。


さっきまで熱を帯びて夢中で動いていた指先は、
まるで魔法が解けたかのように、冷たく、硬く固まってしまった。

振り返る勇気さえ持てないまま、
私はただ、秘密を暴かれた絶望感と共に、青白く光るスマートフォンの画面を凝視し続けることしかできなかった。
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